不妊症外来不妊症の検査
「妊娠できるかどうか」は残念ながら検査ではわかりません。一定期間妊娠が成立しない場合に不妊症と診断されます。検査でわかる不妊の原因ももちろんありますが、原因不明不妊と呼ばれる、検査で異常が出ないにもかかわらず妊娠が成立しない場合も少なからずあり、治療を進めていくことによってその原因が明らかになっていくケースもあります。
治療方針を決める際には、検査結果だけでなく、ご夫婦の年齢、今まで受けた治療、不妊期間など、総合的に判断して進めてまいります。
基本検査
ホルモン検査(採血)
- 1. 基礎ホルモン検査
- 卵巣の機能をチェックするために、月経開始5日以内に脳下垂体から分泌される黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチンおよび、卵巣から出る女性ホルモンを測定します。ただし月経不順が強い場合には、随時検査を行います。
- 2. 黄体ホルモン検査
- 卵子が排卵された後の卵巣には黄体ができ、黄体ホルモンを分泌します。黄体ホルモンは子宮内膜を厚くし着床を促します。
- 3. 甲状腺ホルモン検査
- 甲状腺疾患は妊娠を希望する女性の約10%に認められます。甲状腺ホルモンは卵胞の成長から黄体機能、妊娠初期の胎児の発育に必要なホルモンと考えられており、わずかな甲状腺機能異常が妊娠率や流産率に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
クラミジア検査
クラミジアは卵管の炎症を引き起こす代表的な菌です。感染してもほとんどは無症状で、子宮から卵管、そして腹膜へと炎症が広がり、不妊の原因になることがあります。クラミジアの検査には、血液から感染したことがあるかをみる抗体検査と、直接子宮頸管にクラミジアがいるかをチェックする抗原検査の2通りがあります。
子宮卵管造影
卵管疎通性検査は3種類ありますが、当クリニックで行っているのは子宮卵管造影法です。月経終了後から排卵前に行う検査で、造影剤を使用して子宮内腔の形に異常がないか、卵管が通っているか、さらに卵管留水や卵管周囲癒着の有無などを調べます。事前にクラミジア検査を済ませている必要があります。
経腟超音波検査
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮奇形等子宮の状態や、卵巣のう腫等卵巣の異常の有無を調べたり、卵胞径や子宮内膜厚の計測をします。排卵日付近に子宮の内膜は厚くなり、着床への準備を整えます。また、卵子の入っている卵胞は20mm程に大きくなります。不妊治療において、なくてはならない検査で、卵胞計測は排卵の予測方法として汎用されています。
精液検査
精液量、総精子数、精子濃度(1mlあたりの精子数)、運動率、正常形態率などを検討します。
2日以上7日以内の禁欲の後、マスターベーション法にて精液を容器に採取します。
精液検査の基準値 (WHOラボマニュアル-ヒト精液検査と手技-5版より)
検査項目 | 下限基準値 |
---|---|
精液量 | 1.5ml 以上 |
精子濃度 | 1500万/ml以上 |
総精子数 | 3,900万以上 |
運動率 | 40%以上 |
正常形態率 | 4%以上 |
必要に応じて行う検査(下記以外の検査を行うこともあります)
- 基礎体温
- 排卵後に分泌される黄体ホルモンにより体温は上昇します。自宅でできる簡単な検査で、排卵の確認などに使えます。ただし、体温はホルモンの影響以外でも大きく変動しますので、1日ごとの温度を気にする必要はなく、全体の変化をみてください。また、基礎体温で排卵日を予測することはできませんし、振り返ってみて排卵日を特定できることもありません。
- 抗精子抗体(自費)
- 女性の体内に精子に対する抗体があると、精子は頚管粘液内で動けなくなってしまいます。この抗体があるかは血液検査でわかります。
- 精子特性分析検査(自費)
- CASAというコンピュータで、精子の速度など動きの詳細を解析する検査です。
- AMH(自費)
- AMHは前胞状卵胞内の顆粒膜細胞で主に作られるホルモンです。FSHと合わせて行い、卵巣の予備能力の評価や、排卵誘発剤に対する反応を予測することができる血液検査です。
「卵巣年齢」とよばれたりしますが、実際は卵子の老化の程度や卵子の質がわかるわけではなく、妊娠しやすさが判明する検査ではありません。 - 精子特性分析検査(自費)
- CASAというコンピュータで、精子の速度など動きの詳細を解析する検査です。
- LH-RHテスト・ TRHテスト
- 下垂体の機能に関する精密検査です。
- 男性ホルモン・インスリン
- 多嚢胞性卵巣症候群を疑う場合等に検査します。
- ソノヒステログラフィー
- エコー検査で子宮の内部に、子宮内膜ポリープなど不妊の原因となる病変の存在が疑われる場合にのみ行います。