Gonohashi Ladies Clinic

五の橋レディスクリニック

江東区亀戸 6-26-5 日土地亀戸ビル8F Tel 03-5836-2600

不妊症外来着床不全

体外受精において、40歳未満の方が良好な受精卵(胚)を4回以上移植した場合、80%以上の方が妊娠されるといわれています。しかし良好な胚を4個以上かつ3回以上移植しても妊娠しない場合、反復着床不全と定義しています。
不妊治療の中で着床に関してはまだまだ分からないところも数多くありますが、良好胚盤胞を複数回移植しても妊娠にいたらない場合、着床不全の可能性を疑い以下のような検査を行います。

着床不全の原因

着床にいたらない場合、原因として大きく以下の3つを考え、検査・治療を進めていきます。

着床不全の検査

子宮内膜組織検査
慢性子宮内膜炎は、子宮内膜に認められる局所性の炎症性疾患で、多くの場合自覚症状はありません。診断は、子宮内膜組織を採取し形質細胞(CD138陽性細胞)の存在を確認することにより行います。検査は排卵後黄体期に行い、治療は抗生剤の内服が基本になります。治療後効果判定は、内服終了後1週間以上経過してからとなります。
子宮内膜受容能検査
(ERA:Endometrial Receptivity Array)
子宮内膜に受精卵が着床できる時間や時期は決まっており、これを着床の窓(Implantation Window)とよびます。しかし体外受精反復不成功例の中に着床の窓が一致していない場合があるという報告があります。ERA検査では子宮内膜組織より抽出した遺伝子発現プロファイルを解析することで、子宮内膜への着床のずれを評価できる検査です。着床の適切な時期を特定することで、結果に基づき適した時期に胚移植を行うことを目的とします。
子宮内マイクロバイオーム検査
(EMMA:Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)
子宮内膜の細菌の種類と量を調べる検査で、乳酸菌(ラクトバチルス菌)の割合を調べます。乳酸菌が少ない場合にはその割合を上げることで着床・妊娠率が向上します。検査は排卵後黄体期に行い、治療はサプリメントとしてのラクトフェリン内服です。ラクトフェリンは、直接的に乳酸菌を増やすものではありませんが、プレバイオティクス治療(有用菌の働きを促す物質を取り込む方法)として身体に取り込むことで、子宮内のラクトバティルスの割合を増やし、妊娠率の向上を期待します。
感染性慢性子宮内膜炎を引き起こす原因菌検査
(ALICE:Analysis of Infectious Chronic Endometritis)
ALICE検査は、慢性子宮内膜炎の原因として特によく認められる細菌を検出することができます。通常ERA・EMMA検査と共に検査を行い、ALICE単独での検査は推奨していません。EMA・ALICE検査はERA検査と同時に受けることができます。
25OHビタミンD検査
ビタミンDの欠乏は、卵子の質、着床率の低下や習慣流産、妊娠合併症などとの関連が指摘されています。ビタミンDは免疫寛容に関連するTh2細胞やヘルパーT細胞を調節する制御性T細胞を増やし、一方、免疫拒絶に関連するTh1細胞を抑制することが報告されており、妊娠に有利な免疫状態を誘導することが知られています。貯蔵型ビタミンDである25OHビタミンDが30ng/mL未満である場合には、ビタミンDサプリメント1,000IU(25μg)/日を積極的に摂取することをおすすめします。
銅・亜鉛
銅を体外にうまく排出できない疾患であるWilson病の女性が不妊症や不育症である率が高く、Wilson病の方に亜鉛サプリを用いたところ、血中の亜鉛が増加、銅が減少し妊娠出産にいたったという報告や、銅付加型の子宮内避妊具の避妊効果が高いことより、銅・亜鉛が注目されるようになりました。
銅がなぜ妊娠率を下げるのかについてはいまだ明らかではありませんが、亜鉛との関係性が有力な説として考えられています。銅は生体内に吸収される際に、その大部分が小腸で吸収されます。この吸収経路は亜鉛と同様の経路であり、競合していると考えられています。つまり、より濃度が高い方がより吸収されやすいということです。
血管内の銅濃度が高い方や亜鉛濃度の低い方、また銅/亜鉛比の高い方は、亜鉛サプリを服用することで妊娠率の改善を期待します